論 文 概 要

 本研究の目的は、高齢化社会が進む中、近年アメリカやヨーロッパや日本でシンポジウムやフォーラムで
よくテーマとして取り上げられている、”ユニバーサルデザインとは何か”を明らかにしようとするもので
ある。
 まず、ユニバーサルデザインとは、全ての人にとって、できる限り利用可能であるように、製品、建物、
環境をデザインすることである。それに対して、ユニバーサルデザインの考え方で作られた商品やサービス
のことを共用品と呼ぶ。この共用品の一般的な例として、シャンプーの横についているギザギザがそうであ
る。これは、目が不自由な人が、シャンプーとリンスの区別がつきやすくするもので、また、このような人
ばかりでなく、一般の人でもさわっただけで区別がつくので、うつむいたままで使うことができるというの
は嬉しいことである。
 このようなユニバーサルデザインの商品事例を、第3章では特色や調査をしている。例えば、テレホンカ
ードではカードの短辺に凹形の切り込みが入っていて、この切り込みの数によって、50度数、100度数
特別できるようになっている。また、この切り込みを左前にくるようにカードを持つと、電話の挿入口にそ
のまま差し込めるようになっている。このことによって、挿入方向と表裏が触覚だけで判断できるというも
のである。
 また、商品事例の電化製品で多かった松下電器産業株式会社(以下、「松下」とする)とキヤノン株式会
社(以下、「キヤノン」とする)について、第4章で研究しまとめた。
 松下では、「エレクトロニクス技術を通じて人々の生活の改善と向上を目指す」ことが創業時からの願い
で、そして今、21世紀の超高齢化・共生社会に対応し、使いやすくフレンドリーな商品や生活介助・支援
機器&システムの開発に積極的に取り組んでいる。そしてその結果、最近開発したエンハンススピーカとい
うのが、1998年度Gマーク特別賞として通商産業大臣賞のユニバーサルデザイン賞を受賞したのである。
 本研究により、障害のあるなしに関わらず使いやすい製品であることを目指したユニバーサルデザインと
いう言葉があらわれ、近年アメリカやヨーロッパはもちろんのこと、日本においてもシンポジウムやフォー
ラムなどで取り上げられ、活発な議論が交わされていて、時代はまさにユニバーサルデザインを考慮した”
ものづくり”へと移行しつつあるということをことを明らかにできた。
 このように、ユニバーサルデザインについてより多くの企業が研究し、商品開発の視点や発想を転換する
ことにより、ビジネス展開やユニバーサルデザイン市場の拡大を進めていく必要があると考える。


目次

第1章 はじめに                                                      
第2章 ユニバーサルデザインと共用品                                  
 2.1 ユニバーサルデザインとは                                    
 2.2 共用品とは                                                  
第3章 製品の事例研究                                                
 3.1 シャンプーとリンス                                          
 3.2 缶飲料                                                      
 3.3 おろし金                                                    
 3.4 テレホンカード                                              
 3.5 自動販売機                                                  
 3.6 電化製品                                                    
第4章 企業の取り組み事例                                           
 4.1 事例(1) 松下電器産業株式会社                           
 4.2 事例(2) キヤノン株式会社                               
第5章 まとめ                                                       
第6章 おわりに                                                     
謝辞                                                                  
参考文献