論 文 概 要

 本研究では、特許情報の検索・分析から企業が特許情報を活用し、ライバル企業間での特許戦略に
どのようにいかしているかについて分析を行った。
 特許情報は企業の将来を決める鍵である。そのためには、特許情報とはいかなるものか、なぜ必要
不可欠であるかを理解するため、まず、特許情報の種類・特徴、ペーパーレスシステムについて調べ
た。
 企業における特許情報の利用は、企業活動の各段階において意志決定に必要な情報をタイミングよ
く提供することを目的としている。そこで、企業活動のなかで特許情報を利用することにより、どの
ような効果があるか、特許情報をどのようにすれば有効に活用できるか、特許情報管理が効果的に行
うためには、どのようにすればよいかについて調べた。
 次に、特許情報の入手方法について一口に特許情報といっても、その量は膨大でその中から有用な
情報を選び出すのは容易でない。また、いたずらに特許情報を集めすぎても費用がかさむだけですか
ら、利用者がはっきりとした目的を持つ必要がある。また、特許情報を有効に利用するためには調査
の種類を十分に理解し、目的に最もあった調査方法を選ぶ必要がある。
 そこで、特許情報の活用の具体例として私たちの一番身近な歯ブラシにおいて、調査分析した。ま
ず、特許情報の入手方法として私が利用したのは、Japio*のインターネットによる分散処理システ
ムである。これを利用して、歯ブラシに関する特許と実用新案について図面を含む公報全文をオンラ
インにより表示、ダウンロードにより出力を行い、そのデータをもとに技術動向の調査分析をはかっ
た。
 その結果、出願件数において特許は大きな変化が見られないが、実用新案については減少傾向であ
ることが分かった。その理由として、平成6年の実用新案制度の改正により、出願から商品化までの
期間が短く、ライフサイクルも短期間である分野では、出願した考案が早期に登録されるようになっ
たため、実用新案は、利用しやすくなった。しかし、権利の存続期間10年から6年と短縮されたこ
とが影響していることが考えられる。
 次に、歯ブラシに関する特許情報の上位に位置する企業から、K社とR社の2社を選択し、平成5
年から平成9年の開発状況および関心事項は何かを調査・分析した。
 その結果、特許情報調査は状況把握と今後の開発の方向づけに大いに役立っていることが分かった。

*:日本特許情報機構とも呼ばれ、各種特許情報を効率的に利用できるための提供を行っている財団
    法人のことである。


 目 次

第1章 はじめに                           
第2章 特許情報                                                     
 2.1 特許情報の種類                                              
 2.2 特許情報の特徴                                              
 2.3 ペーパーレスシステムとは                                    
 2.4 企業戦略における特許情報の活用                              
 2.5 企業活動を効率化させる特許情報管理                          
 2.6 特許情報の入手                                              
 2.7 特許情報の調査方法の種類                                    
第3章 特許製品の技術動向分析                                        
 3.1 特許製品の技術動向概要                                      
   3.1.1 年別出願件数の推移                                    
   3.1.2 出願人別出願件数                                      
 3.2 開発傾向                                                    
   3.2.1 利用目的                                              
   3.2.2 一般的な歯ブラシの開発傾向                            
第4章 K社の開発傾向                                                
 4.1 近年の開発状況(出願日から)                          
 4.2 関心事項は何か「効果」から分析                        
 4.3 商品ポイント                                          
 4.4 最新開発状況                                          
第5章 R社の開発傾向                                            
 5.1 近年の開発状況(出願日から)                      
 5.2 関心事項は何か「効果」から分析                    
 5.3 商品ポイント                                      
 5.4 最新開発状況                                      
第6章 まとめ                                                        
第7章 おわりに                                                      
謝辞                                                                  
参考文献