論 文 概 要
  本研究では、価値分析(VE)の実証的考察を行った。
 まず、VEのことをしっかり知るため、「VEとは」という段階から研究を始め、「VEの定義」、
「VEの基本原則」、という順で勉強していった。
  そして、我々は機能の定義の実証的考察を行うため、実際に分析事例として”ボールペンの定義”
について考察した。その他にもノック式ボールペンやリムーバも細かく分解し、機能の定義を行った。
  次に、実際の企業においてもVEを導入して機能の定義を行っているのかなどを研究課題として取
り組んだ。
 そこでまず我々は、石川県内における製造業をはじめとする全業種の事業所を対象として、アンケ
ート調査を実施した。対象企業および業種分類は「北陸三県会社概要」(1995年版/財団法人北陸経済
研究所)によった。これを標本抽出台帳として利用し、それに含まれるすべての調査対象企業(全業種
830社)を重複なく抽出した。アンケートの回収状況は、発送企業830社のうち246社から回答があった
(回収率29.6%)。
 アンケートの質問は、指示した回答選択肢の中から選んでもらう方法をとった。
質問は、VEを知っているか,VEを導入しているか、VEの導入目的、機能の定義を行っているか、
機能の評価を行っているか、アイデア発想法は何か、VEの社内研修を行っているかについての7項
目とした。これにより、VEは我々が予想していた以上に知られていて、導入している企業も多くあ
った。導入している企業の業種は製造業が多く、そのほとんどがやはりコストダウンを目的としてい
ることがわかった。
 次に我々は、企業の担当者から生の情報を得ることにより、研究を深めた。このアンケート調査に
回答した企業のうち、機械工業のK社を選定し、どのようにVEを活用しているかなど聞き取り調査
を行った。
 K社はアンケートでVEの導入目的はコストダウンと新製品の開発と回答している。K社ではいつ
も30%程度のコストダウン目標をたてていることがわかった。
新製品の開発というのは、まったく新しい商品をつくるとき、あるコスト目標をたててつくるという
ことがわかった。
  本研究により、
(1)機能定義をする際には、どのレベルまで部品を定義していくかで機能系統図の完成度合いが異
なることがわかった。定義した機能から改善を進めるのがVEの手順であることから、完成度合いが
低いと大きなコストダウンにはつながらないのではないかと考えられる。
(2)石川県内の企業のコストダウン以外のVEの活用が少ない。とくに最近の企業環境を考えた場
合、新製品開発へのVEの活用が必要と考えられる。
ということがわかった。
 このことから、我々は、次のことを提言したい。
  (1)VEの考え方、実施手順の理解を深めるための社員教育を充実される。
  (2)VEを進めるにあたり、コストダウン目標などをあらかじめ立てて組織的に進める。


 目 次

第1章 はじめに
第2章 VEとは
  2.1 VEの定義
 2.2 VEの基本原則
 2.3 VEの考え方に対する考察
第3章 VEの方法論について〜機能の定義とは〜
 3.1 機能の定義の目的
   3.1.1 機能を明確にする
      3.1.2 機能を評価する
   3.1.3 アイデアを出しやすくする
   3.1.4 アイデアを評価する
 3.2 機能の定義の方法   
      3.2.1 機能の表現
      3.2.2  定量化しやすい機能表現
      3.2.3  機能表現の抽象化
      3.2.4  機能と制約条件
   3.2.5  機能の種類
  3.3  機能の定義の手順
      3.3.1 対象テーマの構成要素分割
      3.3.2 構成要素の機能の定義
      3.3.3  制約条件の設定
      3.3.4  機能の分類
 3.4 機能の定義の留意点
   3.4.1 機能の意味の理解
   3.4.2 定義の意味の理解
      3.4.3  ものと機能の関係
   3.4.4  機能の表現の要点
   3.4.5  不足する機能の追加
 3.5 VEの方法論に対する考察
第4章 機能の定義の実証的考察
 4.1 分析事例”ボールペンの定義”について〜考察とその改良案の提示〜
 4.2 その他の分析事例
 4.3 機能の定義の実証的考察
第5章 アンケート調査の方法
 5.1 アンケート調査とは
   5.1.1 アンケート調査とはどのような調査か
     5.1.2 アンケート調査の定義と特徴
  5.2  アンケート調査のプロセス
 5.3 収集するデータの特徴
第6章 アンケート調査の結果
 6.1 調査概要
 6.2 アンケート回収企業のプロフィール
 6.3 調査結果の概要
  6.4 調査結果の詳細分析
第7章 企業への訪問調査
 7.1 K社の概要
 7.2 K社のVE活動状況
第8章 まとめ
第9章 おわりに
謝辞
参考文献
付録